1人が本棚に入れています
本棚に追加
「んで、それとお年玉貯金使っちゃうのと、何の関係があるんだよ」
「そうすれば、自分が変われる気がしたんです。一つ殻を破る事が出来る……。そんな気が、したんです」
明らかに気のせいだが。
後になって、悔やみまくって通帳片手に酩酊する様が目に浮かぶ。
「で、なんで俺のところに?」
「いや、いっつも金が無いって言ってるし、パーっと使ういい方法を知ってるんじゃないかなーと」
「なるほど、確かに俺は常に金が無い」
悲しいがその通りだ。
自分でもそこそこの浪費家だとは思っている。
「だがな、武智。毎月何に金を使ったかなんてのは、全く覚えていない!!」
「おお、無駄に力強く……」
「そもそもだな、何に使ったかきちんと覚えていたら、それは管理が出来てるって事だろう?」
「た、確かに……」
「管理できないから金が無いんだ。つまり、毎月毎月気が付いたら金は無くなっているんだよ」
武智には衝撃的な真実だったらしい。
まあ、これで彼が浪費家の何たるかを少しでも学んでくれれば良いのだが。
「つまり……クズって事ですか?」
平たく来たな。俺が何を言っても傷つかないって思っているんなら、それは大きな間違いと言うものだが。
「まあ、でもその通りだな」
「認めるんですね……」
「そりゃ、日々の食事にも困るような有り様だからな。自覚もするさ」
それから俺は一つ深呼吸をしてたケチを真っ直ぐに見据えた。
「金を使うときには人に相談するな。自分で自分のためにパーっと使いたいときは、自分で決めて使うんだ。人の勧めに従って金を使ったら、後できっと後悔するときが来る」
そうなのだ。もし彼が俺の勧めに従って金を使ったとして、それが真の無駄遣いだったと自覚したとき、武智はきっと俺を恨んでしまうだろう。だが、そんな事をしても何もならない。何しろ決めたのは武智なのだから。
「でも、どうすりゃいいのか……」
「自分の心に尋ねてみろ。それでわからなきゃ貯金だな。無理に使おうとするから辛いって事もある」
武智は気まずそうに顔を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!