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「お前は別にみみっちくないだろう。せせこましいってのも本当に冗談だ。何の流れからそうなったのかは知らんが、飢えているとはいえ、俺みたいな先輩に差し入れをしょっちゅう持ってくるなんて、せせこましい奴じゃ絶対にしないね」
「そうですかね……」
「そうだ。現にお前以外から差し入れを貰ったことなんてない」
「なるほど……」
こたつの上のコンビニ袋をじっと見つめ始める武智。
「……でも僕、先輩への差し入れを勿体ないとか思ったことないんですよ」
「そりゃ嬉しいが」
「なんでなんですかねぇ」
「さあな、けどその辺に答えがあるんじゃないのか? そう言えば、彼女は何でみみっちいって?」
「なんか、俺が身の回りの物に対してケチりすぎてるとか……」
確かに。
今日、うちに来た格好を見ても、自らの生活についてはさして金をつぎ込んでいないように見える。この調子で切り詰めているのを日々目の当たりにさせられていたとしたら、みみっちいなんて言われるかもしれない。
その割に、俺への差し入れは欠かさない。
改めて考えると、妙な奴ではある。
「ああ、そうか……。分かりましたよ先輩」
「何が?」
「この金の使い方です。やっぱり、相談に来て良かった」
「まあ、俺は何もしていないけどな」
そう言うと、武智は首を左右に振った。
「とんでもない。大助かりしました。さすがは先輩」
「……まあ、適度に崇めて、また貢物でも持ってきてくれればいいよ」
「はい、そうします。とりあえず今日は帰りますね。思いついたので」
「おう、まあ、頑張れ」
「はいっ!! 失礼します!!」
武智は入ってきたときより軽やかな足取りで部屋を出て行った。
何を思いついたのかは知らないが、まあ、頑張れとだけ心の中で言っておこうか。
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