3日目

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どうせなら、自分がおいしいと思うものを食べてもらおうと思ったのだ。 それを正直に申告すると、三好は少し困惑したような表情を浮かべた。しかし特に何も言わず、真季と同じものを選んだ。 …何だかんだ、優しいのだろう。真季はなんとなくほっこりした気分になりながら会計を済ませた。 店の外のベンチに腰掛け、早速食べ始める。 「…うまい」 「おお、それは良かった」 ふと空を見上げると、さっきよりも雲が広がっているようだった。もしかしたら、通り雨があるかもしれない。 「…三好くんって、いつもはどこに行ってるの?」 空を見上げたままさりげなく、真季は質問をした。 三好はしばらく答えなかった。カップかき氷を鋭い目つきで睨んでいるばかりだ。真季は内心失敗したかな、と思いつつ、根気強く答えを待った。 「…海」 やがて、ぽつりと三好が答えた。予想外の答えに、真季は思わず三好の顔をじっと見つめる。 「電車で?」 「途中下車してチャリで行く」 なんで海?と真季が問いかけようとした、その時。 ゴロゴロゴロ… ふいに雷鳴が響き、その後すぐに雨が降り始めた。ひとまず店の軒下に避難し、2人は思わず顔を見合わせた。 「三好くん傘持ってる?」 「持ってない」 その時ふと、真季はカバンの底に折り畳み傘があることを思い出した。素早く取り出すと、三好に差し出す。 「じゃあこれ使って」 「―…お前はどうするんだよ」 「自転車じゃ使えないしさ、ここから近いから平気」 ヘラっと笑ってそう返すと、ふいに三好の顔が険しくなった。 「…普通に考えてお前の方が濡れたら駄目だろ」 その表情の厳しさに真季は少し怯む。しかし、 「でも元はと言えば私のせいで遅くなったんだし、使ってね!」 無理矢理三好に傘を押し付けると、自転車に飛び乗った。 「…おい、逢沢!」 勢いよくこぎだした真季の背後から、三好の声が聞こえてくる。よく考えたら名前をちゃんと呼ばれたのは初めてかもしれない、とチラッと思う。不思議と速くなる鼓動を感じつつも、それを認識する余裕もないまま、真季は夢中で雨の中を走り抜けた。
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