1人が本棚に入れています
本棚に追加
補習期間中はちゃんと目覚ましで起きれていた。しかし、今日だけは何故か母親の声で目覚めることになった。
「真季?もう8時半だけど」
「んー…えっ?」
真季はぼんやりとした頭で起き上がる。少し視界が潤んでいて、体が無性に熱い。
「顔赤いけど、熱でもあるんじゃないの?昨日びしょ濡れだったし」
そうかな…と答えながら真季は体温計を脇に差した。そしてふと、昨日のことを思い出す。
…濡れたら良くないと言われたのに結局風邪を引いてしまった。怒られるか、呆れられるだろうか。
「今日は休みなさい」
37度5分と表示された体温計を見て、母親はため息をつきながら言った。真季は大丈夫だと言いかけたものの、大人しく従うことにした。
(補習なんてめんどくさいだけだし、むしろラッキーなのに)
自分の気持ちがよく分からないまま、布団にもぐる。真季は浅い夢を繰り返し見ながら、段々と深い眠りに落ちていった。
母親が仕事に出かけた昼過ぎ、真季はインターホンの音で目が覚めた。宅配便とかだろうか。一応身だしなみを整えつつ、モニターを見た真季は目を疑った。
「えっと…どうしたの?」
「補習のプリント」
それだけ言うと、色素の薄い髪がモニターから消えた。とりあえず真季がドアを開けると、玄関には三好が立っていた。
「わざわざありがとう。別に明日でも良かったのに」
「いや…」
珍しく歯切れ悪く三好が言いよどむ。こんな姿は初めて見るかもしれない。
「…俺のせいで風邪引いただろうから悪かったと思って」
「いやいや、これは自分のせいだから!三好くんが気に病むことないよ」
真季が顔の前でぶんぶんと手を振って見せると、三好は複雑そうな顔をした。そんな彼の表情を見て、真季はふっと微笑みたくなった。
三好のことは未だによくわからないし、態度はぶっきらぼうだと思う。
(…それでも、やっぱり優しいんだな)
そこでふと、思いつく。
最初のコメントを投稿しよう!