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じゃあさ、今度補習終わりに一緒に海連れてってくれない?」
「…は?」
思い切り顔をしかめる三好に構わず、真季は続けた。
「別に泳いだりしなくていいからさ、昨日聞いてなんとなく興味持ったんだよね。…駄目?」
しばらく沈黙が続いた。…やっぱり駄目だったか。
真季は調子に乗りすぎたことを反省していた。ここ数日でちょっと話せるようになったくらいだし、仕方な―…
「…じゃあ早く治して、さっさとプリント終わらせろよ」
その予想外の答えに、真季は勢いよく顔を上げた。そして三好の顔をまじまじと見つめる。
「いいの?」
「…一回だけなら」
相変わらずの鋭い目つき。しかし、何故かその表情は微かに柔らかかった。喜びなのか諦めなのかは、分からなかったけれど。
「ありがとう!頑張るよ」
ニッコリ笑って真季が拳を握ると、三好は少したじろいだ後に目をそらして
「おう」
とだけ呟いた。
元々体が弱い方ではなかったため、真季の体調は次の日には全快していた。今日も暑い日差しが全身を突き刺す。
いつものように九時少し前に教室へ向かうと、そこにはすでに三好の姿があった。
「…おはよう?」
「おはよ」
びっくりして疑問形になってしまった真季に対して、三好はめんどくさそうながら挨拶を返した。
(初めて挨拶返ってきた)
色んなことに驚きつつ、真季はゆっくり席に着いた。ちらりと横目で三好を見てしまう。
そこにまたいつものように山野がやって来て、2人にプリントを渡した。
「おー三好、やっと真面目にやる気になったか。まあ今日が最終日なんだがな」
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