4日目

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「え?」 思わず言ってから、真季と三好はお互い顔を見合わせた。そしてなんとなく、お互い目を反らす。 「本当は明日までだったんだがお前ら頑張ってたからな。特別大サービスだ」 山野が得意気に言う。 「その分今日は難しいぞ。まあしっかりやれよ」 真季はそれをぼんやり聞きながら考えていた。 (今日で終わりかー…) 初日を思い出す。暑くてやる気が出なくて、早く終われとしか思っていなかった。なのに、どうして少し寂しく思ってしまうのだろう。 窓から突然現れた三好。学校にあんまり来なくて、話したことすらなかったクラスメイト。謎めいていて、それでも本当は優しいことを知った。 (…補習が終われば、また疎遠になっちゃうんだろうな) 何故だか胸が痛む。 いつもやる気がなくて、適当に流されていた自分のそんな感情に真季は戸惑っていた。 山野が去ると、真季はくるりと三好の方を向いた。 「今日は私めっちゃ頑張るから!」 三好が目を丸くする。ふいに初日の姿を思いだした。たった数日前のことなのに、懐かしく感じる。 「…まあ期待しないでおく」 ぼそっとそう呟くと、三好は素早く問題を解き始めた。真季もそれに倣い、プリントに専念する。 シャーペンの音がカリカリと響く教室。グラウンドのにぎやかさとは正反対の、ある意味隔絶されたような空間に2人。 真季は必死に問題を解きながらも、この不思議な雰囲気を忘れたくないと思った。 最後のプリントを終えた2人は、学校の最寄り駅から電車に乗っていた。 海岸のある駅までは5駅。ぽつぽつと会話はしたものの、車窓を眺める三好の目はどこか遠くを見ているようで、心ここにあらずといった様子だった。そして時々、話しかけている真季をじっと見た。 小さな無人駅で降りると、三好は迷わず駐輪場へ向かった。そして自転車の鍵を外すと荷台を指差した。 「えっと?」 「乗れ」 意味が分からず問いかけた真季に三好は短く告げた。そしていつかとは逆に、真季のカバンをパッと取り上げて自転車の前カゴに入れた。 「…失礼します」
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