4日目

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へへへ、と真季は軽く笑った。一緒にするなと言われるかと思いきや、意外にも三好は 「ああ」 と、小さく答えた。思いがけない返しに、真季の心は微かに震える。それと同時に、こんなに小さなことを嬉しく思う自分に、戸惑ってもいた。…それでも。 ずっとこうしていられたらいいのに。 「…ねえ、三好くん」 三好がゆるゆるとこちらを向く。真季はこっそり深呼吸をした。 「――私は、三好くんが学校来てくれたら、嬉しいかな」 三好は目を丸くした。淡い色の光彩に、真季は思わず見とれてしまう。 「三好くんと仲良くなりたい子結構いると思うよ?」 「興味がない」 なんとなく気恥ずかしくなって茶化した真季に、三好はズバッと言い切った。しかし… 「…まあ考えとく」 (あっ) 顔をそむけた三好の頬が…ほんのり赤いような気がする。気のせいかもしれないけれども。 今日のこの日を、私は忘れないだろう。 真季はそんな三好越しに海を見ながら、強くそう思った。 来た道を今度は2人並んで帰る。一昨日とは違い、今度は三好が自転車を押し、真季はその横を歩いていた。 真季は自分より頭ひとつぶん大きい三好の顔を見上げる。全体的にどこか儚げな雰囲気なのは、髪色のせいだろうか。 「三好くんの髪ってさ、」 「ずっと言おうと思ってたかど、同じクラスなんだから三好でいい」 真季は思わずどぎまぎしてしまった。何故かは分からないけれど。 「み、三好」 「何」 緊張しながら、なんとか呼んでみる。返事をする態度は素っ気なくて、いつのまにかいつもの三好に戻っていた。 「その髪色って地毛?」 「地毛だけど。なんで?」 「…いや、すっごい綺麗だなーって思って」 じーっと真季が見つめると、三好は眉をしかめて目をそらした。 「ばあちゃんもこんな色だったらしいし家系じゃない」 へえーっと真季は間抜けな相槌を打った。…そんなことを言っているうちに、いつのまにか駅に着いていた。 「今日ほんとにありがとう。…あの、」 「逢沢」 改札前で立ち止まると、二人は真っ直ぐに向き合った。 「…じゃ、また」 三好の言葉に、真季は目を見開いた。 また。 たったそれだけの言葉。それでも、真季は泣き出しそうだった。 「…またね、三好」 真季は精一杯の笑顔を浮かべて手を振ると、三好の背中が見えなくなるまで、ずっと改札内で見つめ続けた。
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