1日目

2/3
前へ
/19ページ
次へ
強い日差しが差し込む午前中の教室は、どこか気怠げな空気で満ちていた。 (空青いなー…) 外から聞こえてくる部活動のかけ声をぼんやり聞きながら、真季(まき)は今日何十回目かのあくびを噛み殺した。 8月上旬。世間の学生達は皆、思い思いの場所でそれぞれの夏休みを満喫しているであろう季節。 そんな日に彼女は一人、教室でプリントを解いていた。 (せめてクーラーがついてればなあ) 貧乏な田舎の公立高校であることをちょっぴり恨みつつ、数式の書かれたプリントに目を落とす。―まだ半分も終わっていない。 貴重な高2の夏休みに何やってるんだろ。自業自得とはいえ、やる気が全く出ないまま、真季は朝の担当教師との会話を思い出していた。 「えー…私1人ですか?」 暑い中30分も自転車をこいでやって来た彼女に、教師は非常な事実を告げた。 「いや、本当は2人なんだが。もう1人はあの三好だからな」 「ああ…」 『あの』と言われて納得してしまうほど、三好陸(みよしりく)の名前は有名だった。 同じクラスではあるものの、席も離れている真季とは一切接点がない。正直、顔もぼんやりと思い出せるかどうかといったところだ。それでも彼の存在は、ちょっと特異だった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加