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「ん、雨か…」額にポツリと水滴が当たったのを感じ、目を覚ました。
何かがおかしい。そもそも私は家で寝ていたはず。何故こんなところにいるのか、どうやってここまで来たのか。様々な疑問が頭をよぎる。すごく頭が痛い。
「ふぅー」
大きく息を吐き、冷静に出来事を整理しようとする。しかし、現状を理解することはできなかった。薄暗い湿気の多い森。見たこともない。 赤く染まった月。
何が何だか全然わからない。
ガサガサ
目の前の茂みが音を立てて動いた。
「誰だ!?」
答えは帰ってこない。
異常なまでの焦燥と恐怖を感じる。足がすくむ。もちろん武器などない。が、地面に落ちていた木の棒を剣のように構えた。こうでもしないと動揺が抑えきれない。ピクリとも動けない。そんな状態が5分は続いただろうか。音は聞こえないが、そこに何かの気配がある。その状態に我慢することが出来ず
「誰なんだよッ!」
と手に持っていた棒を茂みに向かって投げた。
カラン
それが棒が何にも当たらずに地面に落ちた音だというのはすぐにわかった。その瞬間気配も消えた。
ほんの少しだけ安堵した。しかしながら、一体なんだったのか。小動物のような小さな気配ではないのは明確だった。狂気じみた何かを感じた
「ヨうこソ 紅茶ハオ好きデスか?」「ッ!?」
後ろに何かが立っている
確実に何かがいる
ゆっくりと後ろ振り向いた。声が出なかった。
そこにいたのはウサギの着ぐるみを来た、ロボットのような『何か』。
欠損が非常に激しく、壊れかけなのが一目でわかる。しかし最も驚いたのは、喋りかけられるまで、一切気配を感じなかったのだ。いや、気配どころか、音も、わずかな空気の変化ですらも気づくことができなかった。
「ヨうこソ 紅茶ハオ好きデスか?」
二度目の同じ質問に、ピクッと体が反応した。『何か』は相変わらず禍々しい形相でこちらを見ている。
「ヨうこソ 紅茶ハオ好きデスか?」
幾度と同じ質問を繰り返す『何か』
5度目も質問にして、やっと内容に目を向けれるほど冷静になることができた。
[紅茶が好きか] その質問は普通なら少なくとも初めてあった人間に対しては聞かないだろう。仮に人間が作ったロボットだとしても、そうは言わさないだろう。
何か意味があるのか?
「ヨうこソ 紅茶ハオ好きデスか?」
相変わらず同じ質問を顔も変えずに繰り返す。答えてみよう。
「紅茶は好きです。」
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