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せん/せい/と/ぷ/に/ちゃん
「やっぱいい匂いするよな、おまえ」
明石のおにいちゃんが、私の耳たぶを軽く噛んだ。保健室のベッドの上で、おにいちゃんが私に覆いかぶさっている。プリーツのスカートがくしゃくしゃで、端っこがおにいちゃんの膝に当たってる。
黒髪が首筋をこすって、くすぐったい。私は、おにいちゃんのジャージを掴む。
「誰か、来ちゃう」
「誰かに見られたら、完全にクビだな」
おにいちゃんが、首から下がった笛を外す。
「クビになったら、パン屋でもやるわ」
おにいちゃんはそう言って、私に唇を重ねた。
明石のおにいちゃんは、私より六歳年上だ。昔近所に住んでいて、イケメンで、運動神経もよくて、頭もいいって有名だった。たまに、違う学区の女の子が、おにいちゃんに告白するために家まで来ていた。だけど、明石のおにいちゃんはとても性格が悪かった。今も、昔も。私はそれを、唯一知っていたのだ。
「明石昴です。今日から皆さんに体育を教えます。よろしくお願いします」
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