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おにいちゃんが、むぎゅむぎゅほほを押しつぶしてくる。こんなことする人が大人だとは思えないけど。
「ぷにじゃなくてふみだもん、うぐう」
視線を感じて振り向くと、はるかちゃんがこっちを見ていた。目が合うと、さっ、とそらす。
「?」
「あとは適当になんかしとけ」
「適当って」
おにいちゃんは私のほほを引っ張るのをやめ、黄昏始めた。多分何言ってもだめそうだ。私は仕方なく、みんなに自由時間だと伝えた。
授業後、はるかちゃんがおにいちゃんに声をかけた。
「先生! 私三角コーン片付けます!」
おにいちゃんは、いつもより覇気のない声で答えた。
「ああ、大丈夫。川内、頼む」
はるかちゃんがむっとする。私は体育倉庫にて、三角コーンを片付けながら言った。
「なんで私にやらせるの? はるかちゃん、やりたがってたのに」
おにいちゃんはマットの上に座り、タバコをくわえた。
「……おまえのさ、友達。はるまきちゃん?」
どんな間違え方なのだ。
「はるかちゃんだよ」
「それだよ。あのタイプはやばい。教育実習の時いたんだよな。やたらとアピールしてきて、二人きりになると迫る。拒絶されるとキレて泣く」
「はあ……」
「はあ、じゃねーよ。変な疑いかけられたら俺の教師生命終わりだからな」
「大変だね、先生って」
「まあな。だから労われよ」
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