せん/せい/と/ぷ/に/ちゃん

19/38
前へ
/38ページ
次へ
 五木先輩が、持っていた鉛筆を置いた。女子に唇を重ねる。先輩はそのまま、女子の身体を弄り始めた。 「ん、だめだよ……」 「いいじゃん、誰もこないって」  そこで目を塞がれた。そのまま、ずるずる引きずられる。気がついたら、駐車場に来ていた。私は、ぼんやりと車を見た。これ、おにいちゃんの車かな。なんだか二重に見える。 「車、持ってたの?」 「こないだ買った。さっさと乗れ、ばかぷに」  私は車に乗らずに、尋ねた。 「先輩に彼女いるって、知ってたの?」 「……知らねーよ。さっき初めて見た」 「なんで、言ってくれなかったの」 「だから、知らないって」 「笑ってたんだ。馬鹿みたいだって」  私は声を震わせた。 「おにいちゃんなんか、嫌いだ」 「俺に当たったって仕方ねえだろ」  そんなのわかってる。でも止まらなかった。 「パシリにするし、セクハラするし、大嫌い」 「うるさい」  おにいちゃんが私の頭を引き寄せた。 「黙って泣け」  私は、おにいちゃんのシャツにしがみついて泣いた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

270人が本棚に入れています
本棚に追加