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「いえ、まだ仕事がありますから」
おにいちゃんは爽やかに言い、外に出た。
私が見送りにでると、おにいちゃんがこちらに視線をやった。
「いつまでも泣いてんなよ。あんな男、大したことねーんだから」
「……もう泣いてないよ」
「あっそ」
おにいちゃんが、私の頭をくしゃっと撫でた。髪や、顔や、全身が夕焼けに照らされて、なんだか違う人みたいに見える。
「じゃーな」
おにいちゃんは、車に乗って去って行った。
翌朝登校したら、職員玄関から入ってくるおにいちゃんと目が合った。
「お、はよう」
「ああ」
私は目を泳がせた。なんだか、きまずい。おにいちゃんは上へ向かおうとして、足を止める。
「教室、行かないのかよ」
「わ、私、購買に行くから」
そう言って踵を返そうとしたら、前からやってきた人にぶつかった。
「わっ」
おにいちゃんが、よろけた私を抱きとめた。
「おまえ、ほんとどんくさいよな」
「う」
私はかあ、と顔を赤らめる。おにいちゃんは眼を瞬いて、私のお腹に触れた。
「ひい!?」
「やっぱ、ぷにぷにしてる」
手のひらの感触に、身体がびりびりした。お腹触られてるだけなのに。
「や、だ」
「やらしい声だすなよ、ぷにのくせに」
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