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おにいちゃんはそう言って、私のお腹から手を離した。
「焼きそばパン、今日はいい。職員会議で弁当出るらしいし」
「う……うん」
「じゃあな」
私の頭をぽん、とたたいて、おにいちゃんは歩いて行く。私は、自分の身体をぎゅっと抱きしめた。心臓がやけにドキドキしていた。
ぷにって、いつまで呼ばれるんだろう。
★
おにいちゃんと再会してから、三カ月が経った。季節はすっかり夏になり、セミが鳴き始めるころ。プール開きの日がやってきた。実は、私はこの日がくるのがずっと憂鬱だった。なぜなら……。
「せんせー! 川内さんが溺れてます!」
「はっ!?」
プールの底に沈みかけていた私を、おにいちゃんが助け出した。
おにいちゃんは、呆れ顔でこっちを見ている。
「おまえ泳げねーのかよ」
「う……」
「ビート板使え」
渡されたビート板を使い、私はバタ足をした。それも虚しく沈んで行く。
「マジか」
おにいちゃんは、今度は私に手すりを掴ませた。
「身体を浮かせるイメージでバタ足してみろ」
私は手すりを使い、足を動かした。おにいちゃんは、呆れ顔で私を見ている。
「小中学で何してたんだよ、おまえは」
「ひ、久しぶりだから足がつっただけだよ」
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