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おにいちゃんは我関せずでプールサイドを出た。抱き上げられたまま歩くと、じろじろ視線が飛んできた。私は、恥ずかしくなって言う。
「じ、自分で歩けるよ」
「うるさい。どんくさい。カメ。のろま」
「そんな、言わなくても」
「俺以外にいじめられてんじゃねーよ。しかもあんなブスに」
「ブスって、言わないで」
小さな声で言ったら、おにいちゃんがこちらを見た。
「はるかちゃんは、ブスじゃないよ……」
「中身がブスなんだよ」
「おにいちゃんがかわいいって思うの、どんな人なの」
「石原さとみみたいな女」
「……絶対いないよ」
「理想は高く持つんだよ」
確かにそうかもしれないけど。保健室に着くと、おにいちゃんは私をベッドに座らせた。
「着替えて、しばらく休んでろ。よくなったら送ってやる」
「う、ん……」
別に悪いところはなかったけど、もう少しおにいちゃんと一緒にいたかったから頷く。私は制服に着替え、靴下を履こうとした。カーテンの向こう、スマホが鳴り響く。私はそっと、カーテンの向こうを伺う。おにいちゃんは取り出したスマホを耳に当てていた。
「ああ、ちょっと。生徒の面倒見てる。うん……そうだな、七時くらいに行く」
スマホを切ったおにいちゃんに尋ねた。
「どこか、行くの?」
おにいちゃんはこちらを振り向いて、
「合コン。遅れるって連絡」
「そ……なんだ」
「なんだよ」
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