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「べつに。性格悪いのばれないように、頑張ってね」
「うるせーんだよ、ぷにのくせに」
なんでだろう。胸がズキズキ痛い。おにいちゃんのことなんか、大嫌いだったのに。意地悪だし、セクハラするし、たまにしか優しくないのに。いつまで経っても私のこと、ぷにって呼ぶし。なんだか、視界がぼやける。ぽた、と膝に涙が落ちた。あれ? なんだろ、これ。おにいちゃんが、目を見開いている。
「……なんで泣いてんの」
「な、んでもない」
「どっか痛いのか? 殴られでもしたのかよ」
おにいちゃんが、私のほほをそっと撫でる。いつも、引っ張るくせに。たまに優しいからずるい。私は、その手をぎゅっと握りしめた。
「ぷに?」
「ぷにじゃ、ない」
私、ぷにじゃない。もう子供じゃない。パシリじゃない。あの頃とは違う。おにいちゃんは自転車じゃなくて車に乗れるし、もう大人だ。意地悪なところは変わってない。だけど、あの頃よりずっと、大人になったんだ。
「私、おにいちゃんに彼女できたら、やだ」
私、何言ってるんだろ。おまえ、馬鹿じゃないの。おまえの意思とか聞いてない。きっと、そう言われるんだ。わかってる。だって、おにいちゃんの理想は高い。私は生徒だし、美人じゃないし、色気もない。
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