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「うるせえ。後に回せ」
更衣室に向かう女子生徒たちから、声が飛んできた。
「せんせー、またねー!」
「ああ、また水曜日にな」
おにいちゃんは爽やかボイスでそう返した。女子たちはきゃーっ、と黄色い声を上げ、体育館から出ていく。おにいちゃんはその声をBGMに、私を体育館倉庫へ引きずっていった。
だれかたすけてー! そう叫ぶ間も無く、倉庫内に連れ込まれた。
おにいちゃんは倉庫に入るなり、だるそうに壁にもたれ、タバコをくわえた。校内は禁煙なのに。恐ろしくてそれを言う勇気はない。あ、あれよく見たら禁煙パイポだ。おにいちゃんは禁煙パイポを吸って、
「久しぶりだな、ぷにちゃん」
「ひ、久しぶり、おにいちゃん」
「でかくなったな」
おにいちゃんの目は私の胸元へ向いていた。私は慌てて胸元をかばう。
「どこを見てるの!?」
「まさかおまえがこの高校にいるとは。意外と頭いいんだな」
うちは県内では結構な進学校だ。
「お、おにいちゃんこそ、まさか先生になってるとは」
「就活すんの面倒だったし」
そんな理由!? 私はびくびくしながら尋ねる。
「は、話ってなに。私教室に戻らないと」
「すぐ終わるよ」
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