プロローグ

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 戦いは泥沼化すると、連鎖のように、呆気なく、未来を生きるはずだった若者達を死なせていく。  たとえ雨が降りしきっていても、大雪で吹雪が起こっていたとしても、さらに厳しくなった環境下の戦場に兵士達は赴いてく。  まるで死を望んでいるかのように、自らの足で戦場という地獄へ続く道を踏みしめて行く。    そして、殆どの者は生きて帰らない。  愛する息子達を送り出した家々に帰ってくるのは、遺体ではない。  運が良ければ、遺品と共に戦死通告が送られてくるが、最悪の場合、戦死通告という紙切れのみという時がある。───いや、殆どの家には息子の名が記された紙切れしか送られてこない。  そんな時代の遺族は思うだろう。 ───何故遺体だけでも見つけて返してくれなかった......と  確かに、その辺は杜撰(ずさん)だと世間は思っている。  多くの失った命の上で、生きていられる祖国の王族や上層部に対して。  しかし───多すぎるのだ。  遺体が。  時間が何よりも厳守され、限られてくる戦場では、遺体回収などしてる暇がない。  そのために、遺族達は天国へ旅立った多くの若者達を弔うことさえできない。  ───戦争は、負の連鎖の元凶である。     
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