桜が咲いたら……

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「なんだこの部屋! 夏か!」 「あぁっ」 とっさに隠そうとするも間に合わず、机の上のリモコンを手に取るとためらいもなくエアコンを切る先生。 「ひどい! 風邪引いたらどうすんの!?」 「頭寒足熱。受験生がぬくぬくの部屋でボーッと勉強して合格すると思ってんのか?」 「うっ」 黒ぶちのおしゃれメガネの向こうから冷たい眼差しが降り注ぐ。 兄の後輩という家庭教師は、先輩の妹と言えど容赦ない。 むしろ兄が何かしたんじゃないかと疑うレベルで容赦ない。 「それだけ強気なら宿題は完璧なんだろうな?」 正方形のこたつ机の左側面に座ると、遠慮なくこたつの中に足を突っ込んでくる。 「あー、あったけ」 「ジジくさっ」 「あん?」 「なんでもありませーん」 地獄耳の先生にしれっと言い返して、宿題を解いたノートを差し出す。
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