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非難がましい私の目に気づいた先生が「しょうがねぇ奴」と呟いて、こたつに突っ込んでいた手を引き抜くと、かじかんだ私の両手を包み込んだ。
「なっ、なっ」
おどろいて言葉にならない私などお構いなしに、先生は熱いくらい温かくなった大きな手で熱を分けるように指先を握る。
冷えきった指先にじんわりと伝わる熱が、あっという間に心臓に到達したようだ。
激しい動悸がして、瞬く間に先生の温もりが脳を沸騰させる。
「これでいいだろ」
私の動揺を知ってか知らずか、先生はそう言うとパッと手を離して「おー、寒っ」と言いながら再び腕までこたつに入る。
ジジ臭い。
てか、やっぱり寒いんじゃん。
エアコン入れよ、と言おうとして止めた。
指先が冷えたらまた温めてもらえる。
「よしっ」
気合いを入れてシャープペンを動かし始めた私に「そうそう、頑張れよ」と小さなエールが届く。
頑張るよ。
桜が咲いたら伝えたいことがあるんだから。
でも、もう少しだけ寒い季節が続いてもいい。
問題を解く頭の隅でそんなことを考えた。
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