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すぐに一体が現れた。傍に来る寸前に位置を変える。球体が止まった。
「今だ! やれっ!」
二人が同時に飛び出してまさに動き出そうとする瞬間、両側から突いた。暴れるが突きが浅かったのだろう、体は開いたが死んでいない。だが開きさえすればこっちのもんだ。レニーはその体を踏みつけて両手でナイフを突き下ろした。
「一体に時間をかけたくない、今度はもっと深く突くんだ」
二人が頷いた。すでに次の相手が転がってきている。
対処が分かりさえすれば、これほど単純な敵はいない。怖いのは群れた時だけだ。そしてキャルはその群れの真っただ中にいる。あともう少しでキャルに届く。レニーは痛む肩を庇いもせず先を急いだ。
途中でおびただしい敵の死体を見つけた。
「これ、全部キャルが……?」
マールの声が震えている。ざっと20体ほど。しかもナイフが落ちている。
(キャルには武器が無い)
兄が悪鬼のように戦う姿が目に浮かぶ。
(あんたは嫌がってたけど、その辺のハンターよりずっとハンターらしいよ)
根っからのハンター。それは兄のような者を言うのだろう。
「もうそろそろよ、見えてもおかしくない」
また1体が転がってきた。3人で組んで倒す。向うからまた次が……
その先を見た。一本の木の下に群れている魔物たち。それを見上げると…キャルが横たわっていた。
(キャル!)
声を出すのは愚かだ。
レニーたちを感じたのか何体もがこっちに方向転換し始めた。だがここはヤツらにとって障害物が多すぎた。3人で1体ずつ始末していく。
何度かレニーの体にぶち当たり肩はもう痛みを通り越して何も感じなくなっていたが、レニーは方針を変えなかった。それで上手くいっている。手を変える必要を感じない。
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