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「今日はとても冷えるね、でもこうしていれば温かいだろう?どうだい?」
頭上で優しい声がする。昔から聞き慣れた声だ。ぼくは毎年この人を包んできた。
心地よい声を聞いていると彼女とは別の小さな体がひょいっと入り込んできた。
「うん!おばあちゃんの家にはこたつがあっていいなぁ?ボクの家にもあったらいいのに」
「最近は炬燵を持っている家も減ってしまったのかねぇ...」
ぼくは、毎年沢山の人に囲まれる。しかし、最近はエアコンや電気ストーブ、他にも沢山の暖房器具が出てきたらしくて、こたつの需要は減っているみたい。ぼくと一緒に作られた子たちはどうなっちゃったのかな...。ぼくにはそれを知ることは出来ない。
でもぼくには他に知っていることがある。
ぼくを囲む人達はみんな楽しそうだということ。みんなが口々に「あったかいね」「炬燵にはやっぱり蜜柑だな、買ってきたから食べようか」なんて話してる。それを聞くだけで、ぼくはぼくで良かったなぁ、ってそう思う。
「ボクね、冬におばあちゃん家に来るの、いつも楽しみにしてるの!こたつがあるから!」
「ふふ、そう言ってもらえるときっと炬燵も喜ぶよ」
体だけではなく心まで温かくなったような、そんな声が部屋に響く。
ぼくはみんなを温めるのが仕事。だけど、ぼくもまた一緒に温かくなる。ぼくには大切に思ってくれる人がいる。
もし春が来て押入れにしまわれてしまっても、ぼくは次の冬を待ってそこでじっとしている。
みんなに会えるのを楽しみにしてる。
また一緒に温かくなれるといいなぁ。
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