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降り積もった桜の花びらを舞いあげて歩道を駆け抜ける。 馬鹿みたいだ。 今逃げたって婚約を解消されるなら、どうせまた会って話し合わなくてはいけないのに。 そう思って歩を緩めた私は、あっという間にゆう君に追いつかれた。 「清子待てっ、……何で逃げるんだよ?」 薄暗い街灯に照らされて、見上げたゆう君の顔は今までに見たことがない、泣き顔になっていた。 「ごめんなさい。……ごめんなさいごめんなさい」 つられて溢れだした涙を慌てて拭う。私は願いを叶えてゆう君を深く傷つけた。私は加害者だ。怒られてなじられて当然な自業自得な私が泣くなんて、許されない。 「もう私はゆう君と結婚できない……。ごめんなさい」 けれども頭を下げる私に降ってきた言葉は、私の予想をはるかに越えていた。 「良かったね、清子」
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