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「ごめんっ、出掛けにちょっとゴタゴタしちゃって……」 慌ただしく店内に飛び込んできた加藤君を笑顔で迎える。 慣れっこだからね、なんてけなげな台詞吐いて、昔みたいに笑顔で。 「いや、アイツ一人っ子だし片親だからどんどんワガママになっちまって……、俺のしつけが中途半端だからさ」 私の他にもたくさん彼女がいた加藤君。その中の一人が妊娠して、できちゃった結婚をした加藤君は、予想通り早々と離婚をした。予想外だったことは、奥さんが子供を置いて出ていってしまったという事。 全て風の噂で聞いて知っていたけれど、加藤君は親身になって話を聞く私に、苦労話を全てを打ち明けている。 「……それでも加藤君は頑張ってるんでしょう?子供には加藤君の気持ちはちゃんと伝わってるはずだよ。大丈夫だよきっと」 「そうだといいんだけど……。てか、清子ちゃんが今も独身だったなんて」 「売れ残りです」 自虐的に笑い飛ばす私に安心したのか、加藤君はますます饒舌になる。 「あぁ、俺やっぱり清子ちゃんみたいな優しい子と結婚すれば良かったなぁ」 「気付くの遅いよ」 微笑みながら言葉を返す。 一体この男はどんな神経をしているのだろう。自分から捨てたくせに。 私と付き合っていた記憶なんて十年経って無くなってしまったのだろうか。
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