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そしてその週末。
私はまた加藤君に会った。
待ち合わせ時間から一時間遅れて、加藤君はその店に飛び込んできた。
今日は小さな居酒屋だ。
「ごめんっ、アイツなかなか風呂に入らなくて……、何飲んでるの?」
私の向かいに座った加藤君がいそいそとメニューを開く。
一時間も待って、メニューなんか丸暗記してしまった。加藤君が開いたページを一緒に覗き込み、彼が好きそうな料理にさりげなく指を指してやる。
「おっ、いいねー。うまそっ、だし巻きと……これとこれも頼もう」
加藤君の喜ぶツボはまだ全部記憶している。
「子供はばあちゃんにまかせてあるからさ、今日はゆっくりしよう?」
安い居酒屋で加藤君が私の手を握る。
こんな風に加藤君のペースに飲まれる。
全部、慣れている。
慣れていた。昔から。
なんて分かりやすい、予想通りの展開なんだろう。
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