11/18
前へ
/72ページ
次へ
  ――― ゆう君は私を追って来てくれなかった。加藤君に手を引かれ、空っぽの心のままついていく。 「ごめんね、清子ちゃん。俺なら清子ちゃんを絶対泣かせないって思ってたんだけど……」 加藤君が立ち止まっては涙を拭ってくれるけれど、それはきっと永遠に終わらない儀式のように思えた。 「清子ちゃんはもう辛いこと考えなくていいから。ゆっくり元気になろう?」 頭ごと加藤君に抱きしめられて、ここが路上であるのも忘れてこのまま眠ってしまいたいと思った。朦朧とした意識の中でゆう君の声が聞こえた気がした。 やっぱり、私はゆう君が好きだ。 「清子、……清子!!」 はっきりとした幻聴に、驚き加藤君の腕から抜け出すと。 息をきらして涙を流すゆう君がいた。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加