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「小林さん、なんなんですか」
加藤君が怪訝な声を出す。
「ごめんなさい。清子、清子に聞きたいことがあるんだ。」
ゆう君が苦しそうに呼吸を整える。
「ねぇ、清子。……俺、清子を追ってこの道を走らなかった?清子が泣いてて……、桜が散ってて……、ねぇ、これ俺の記憶かな?それともただの夢かな……?」
ゆう君のその言葉の意味に気づき、私の涙がようやく止まった。
「ゆう君、記憶が……、えっ……」
「それで、今、ファミレスのレジに財布ぶん投げて来ちゃって……、俺これも二回目だと思うんだけど……、違うかな?やっぱり夢かな……?」
一瞬だけ止まっていた涙が再び溢れ出す。
「夢……じゃない、それ、ゆう君の記憶よ……」
涙を拭い、ゆう君に歩み寄る。ふと気づき振り返ると加藤君がまたあの拗ねた表情をして佇んでいた。
「ちぇー、もう少しだったのになぁ……。でも、……良かったね、清子ちゃん」
そして加藤君はまたいつもの笑顔に戻ると背中を向けて歩き出す。
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