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―――
「小林さん、いい人だったね」
静かになったリビングに陸人の呟きが小さく響いた。
彼女は在るべき場所へ帰って行った。それだけだ。それだけでこの家はこんなにも、広い。
「ごめんなー……、陸人寂しいよな」
「俺はお父さんとばぁちゃんがいるから大丈夫。それに、清子お姉ちゃんも小林さんも遊びに来てくれるって言ってたし。それより、お父さんでしょ、寂しいのは」
そう言って強気に笑う陸人の笑顔に不覚にも涙がこぼれそうになった。
「……なに言ってんだよ。お父さんは大人だし、こんなのは全然大丈夫だよ」
「嘘だ、清子お姉ちゃんが大好きだったくせに。お父さんはさ、清子お姉ちゃんを最後までちゃんと守ってあげて、かっこ良かったと思うよ」
ちょっと待て、これはヤバイ。本気で顔が上げられなくなるじゃないか。
「あのねぇ、お父さん?辛い時とか悲しい時は一人で我慢しちゃいけないんだよ?」
「え」
どこかで聞いたようなセリフに驚き、涙目のまま思わず陸人の顔を見る。
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