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「お父さんが辛い時は俺が助けるんだから、ちゃんと言わなきゃダメだよ」
「それ……」
俺が、彼女に言ったやつじゃん……。後輩といい、陸人といい、なんで一々恥ずかしいセリフを覚えているのか。
「まさか回り回って自分に励まされるとはなぁ……。はぁぁ……」
「なに?どうしたの?」
脱力して項垂れたところを陸人が楽しそうに覗き込んでくる。
「なんでもない、よし!!じゃあ今日は飲むぞ陸人!!朝まで付き合えよ!?」
「え!?やだよ俺未成年だよ!!」
「コーラでも麦茶でもなんでもいいよ」
「朝までは無理だって!!あぁもう、助けるとか言わなきゃ良かったー」
――だって先輩。もしその王子様が記憶を取り戻してさ、お姫様を迎えに来たら。
そしたら先輩、あっさり姫様を返しちゃうでしょ――
後輩に言われた通りの結末になってしまったけれども。陸人がいてくれて良かった。喜びも悲しみも分けあえる存在があることにこれほど助けられるとは思ってもいなかった。
彼女は春の幻だった。この一年は彼女が全身全霊をかけて見せてくれた儚く幸せな夢だったんだ。
彼女の幸せを願える俺は、少し成長できているはずだ。きっと俺にだってまた新しい幸せが訪れる。そう思えば笑顔になることができた。
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