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え?と眉を持ち上げる加藤君にもう一度、笑顔で答える。
「あなたみたいに勝手な人とは結婚できません」
言葉の意味を理解しようと目を泳がせる加藤君を見つめて淡々と言葉を続ける。
「私といて楽しかった?結婚を意識しちゃった?ごめんなさいね。私には全くその気はないから。本気で私にあの女が産み逃げした子供の面倒なんか見させるつもりだった?相変わらずすごい無神経だわ」
「清子ちゃん……、え、だって、……じゃあなんで……?」
「なんで今日までおとなしくしてたかって?わからないでしょう?加藤君にはわからない。きっと一生わからない。捨てられた女の気持ちなんてきっと一生わからない。捨てられたのに毎日毎日思い出してしまう女の気持ちなんてきっと一生わからない。いつか会ったら復讐してやりたいなんて、十年も思っていた女の気持ちなんてきっと一生わからない。十年間憎くて憎くて憎くて、忘れられないこんな想いをっ、……加藤君になんか理解されたくない」
「清子ちゃん……なに……言ってるの……?」
止めどなく溢れる私の言葉に狼狽えながら声を絞り出す加藤君を睨み付け涙をこらえる。
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