20人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
2
夕暮れ時のスーパーマーケットの駐車場は混み合っていた。
仕事帰りのだるい体を引きずるように車から降り自動ドアを目指す。
入り口横にいくつか並んだベンチに違和感を覚えてふと足を止めた。
若そうな女性が一人座っている。
珍しいな、と思った。
いつもあのベンチに座っているのはカップ酒を片手に上機嫌になっている老人や、けたたましい笑い声を響かせる婦人の集団で、それもだいたいが昼の時間が主だ。
待ち合わせだろうか。
長く伸びたストレートの髪を垂らし、足元に見入るように俯くその姿に見覚えがあることに気づく。
声をかけようか一瞬迷ったのは、その姿があまりにも細く危うい雰囲気をまとっていたからだ。
視線に気づいたのか彼女がこちらを見上げ口を開く。
「……あぁ、加藤君」
半年ほど前に俺をこっぴどく振った彼女が、困惑したように薄く笑顔を浮かべる。
「……清子ちゃん、ここで何してるの?」
最初のコメントを投稿しよう!