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無邪気にさらりと雄造にとってうれしい言葉を雪は発する。
それ故に雄造は、更に雪を大切に思える。
当たり前な夫婦ではないが、二人ともまだ若いが、十五歳の雄造と十歳の雪は紛れもなく強い絆で繋がれている。
「行こうか」
昨日と同じように雪の手を引く雄造。
それについていく雪。
周囲に気をくばいながら、おそるおそる中野泰宗の屋敷の前につく。
「無事ついたな……。この辺りは私たちの仇討ちはまだ知れ渡ってないのだろうか?」
「まさか。俺が思うに泰宗殿が手を回したのでは?って思うが……。まぁいい。入ろう」
と、雄造が言った瞬間、門が開いた。
「雪様、お待ちしておりましたね。雄造も久しぶりだな」
「泰宗様!」
雪の嬉しそうな声が響いた。
白髪で皺が深く刻まれた老人泰宗は雪を抱き上げる。
「必ず来ると思っていましたよ。雄造、入れ」
呆気にとられた雄造だった。
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