芳文の気持ち

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「じゃあ…行ってくる」 「………」 じっと夏雄が俺を見つめてくる。 そんな変化が嬉しくて俺は彼に近づく。 「どうした…?」 ソファに座る夏雄の顔を覗き込むように、俺は膝を屈める。 すると、ぐいっと彼の伸びた手に胸ぐらを掴まれ俺は引き寄せられる。 「……早く帰ってこい」 掠れる声でそんな事言うなよ…。 嬉しいだろ…。 「…ああ、わかった。すぐに帰ってくる」 言いながら俺は夏雄の唇に己の唇でそっと触れた。 すぐに離れて俺は玄関へと歩く。 後ろから掠れた声が何か文句を言ってきたが、それすら嬉しくて俺は笑みを浮かべて家から出たのだった。
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