3 プレゼンテーション

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「どうです、お茶でも飲んでいきませんか?」  表に出たボクに、魚住が声をかけてきた。  目の前に、復元された東京駅の赤レンガ駅舎が鎮座している。東京の再開発が、一部地点で時代を遡上するのは、おもしろい傾向だ。隣を歩いている魚住の出立ちも、考えてみればレトロ趣味だ。早乙女が羽織っているのも、クラシカルなシャーベットカラーのコート。  翻ってボクの服装は、ファストファッションで固めたリーズナブルなもの。格差を感じてしまう。  ちぇ!  ボクは縁石に足を乗せ、革靴のヒモを結び直した。  3人で入ったのは、テラス席のあるコーヒー専門店。 「この店の豆は、深煎りで香ばしいんですよ。」  ボクは、どちらかというと紅茶党だ。でも、店の中に漂う香しい香りが、コーヒー通を誘うのは分かる。 「鎌田さんは、学生のうちに起業したんですって? 脇田に聞きましたよ。彼は高校の同窓生なんですよ。」 「そうでしたか。魚住さんは、今の仕事は……」 「ボクは、さんざん転職を繰り返して、コンサル業を始めたのは、2年前なんです。早乙女くんは、その時見つけたパートナーなんですよ。」  風が舞い、テラス席にケヤキの落ち葉が迷い込んでくる。その落ち葉を、早乙女がヒールの爪先で押さえ込んだ。ボクは、つい屈みこんで、その葉を拾い上げてしまった。  早乙女は顔を斜めに傾げ、恥ずかしそうに笑う。
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