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「今度の仕事のフレームは、ほぼ出来上がっているようですね。先ほどのプレゼンを見て納得しました。ボクは余計な口出しはしませんから、どうぞ思い通りに作業をすすめてください。」
さっきは、甘い予測などと言った割に、ずいぶん控えめな言い方だ。
「でも、パートナーを亡くされて、さぞお困りでしょう……。いつでも早乙女に手伝わせますよ!」
早乙女が、ボクの名刺を取り出し、中指を這わせた。
「この住所、わたしのマンションから近いんです。近日中に、寄らせていただきますね……」
この2人には、どうも気を許せない雰囲気がある。いかがわしい臭いが、プンプンと漂ってくるのだ。
「ありがとうございます。幸い、和久井がこの仕事の青写真を残してくれているので、ボクはそれに沿って動くだけなんです……」
事実、いついかなる状況でも、和久井は、ボクをサポートできる能力を持っている。
「どうしました? 冷めてしまいますよ?」
運ばれてきたコーヒーに、ボクは、ほとんど口をつけていなかった。何故なら、コーヒーの褐色の表面に、和久井の顔が写り込んでいたからだ。相変わらず剥き出した眼球で、じっとボクを見つめていた。
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