夢でも戯言でもない

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ようやく寒さが緩んだある日のこと。 春は近いが、永井美知は冷え性だ。 すっかり堀子龍男の中に冷たい足を突っ込むのが習慣となってしまった。 熱心なてれび鑑賞のおかげか、堀子龍男は他愛ない世間話もできるようになった。 賑やかとは言い難いが、永井美知の暮らしは穏やかで愉しいものとなっている。 「妖精さん。あなたは夏はどうやって暮らしてるの?」 「どう、とは?」 「冬は炬燵だけど、夏は竿竹の押し売りとか?」 「美知がまだ俺のことを信用していないのはわかるがな。こうやって存在していられないのだ。夏はただ力を蓄えるだけの季節だ」 「ふーん。このままいられる?」 堀子龍男は微かに眉を動かした。 この表情が永井美知にも微笑みだとわかるようになるまで、三ヶ月かかった。
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