夢でも戯言でもない

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ひそひそ。 ひそひそ。 町指定ゴミ袋(中)を両手に持った堀子龍男は目立つ。 当然のことながら、それが堂々と独り身の永井美知の部屋から出てくるのだから噂の的である。 ちょこんと結んだ赤い花柄のエプロンは、視覚の暴力の域に達している。 堀子龍男は辺りをぐるりと見渡した。 薄暗い朝の光の中でも、完璧な化粧を施した大柄な浦江紀奈(うらえきな)は浮かび上がって見える。 まるでてれびで見たあれのようだ、と堀子龍男は思った。 両脇に大瀬野桃李(おおせのとーり)忖度寿留代(そんたくするよ)を従えた様は、横綱の土俵入りだ。
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