29(承前)

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 大深度地下の作戦指揮所で「須佐乃男」訓練生のトップチームが、七弁の花のように放射状におかれたコックピットにはいった。細長い繭(まゆ)のような形の分厚いアクリル製のコックピットには、寝椅子のような形の座席と全周スクリーンが設置されている。スクリーンのなかに潜りこむような感覚だ。  装着するのはクロガネワイヤーが張り巡らされたヘッドセットとグローブだった。思念だけでもロボット兵器の運用は可能なのだが、実際には手をつかった操作のほうが反応スピードが速いという実験結果がでていた。ヒトの手の性能はあなどれなかった。  タツオはヘッドセットを調整した。どうもこのクロガネワイヤーによる無時間通信には慣れることができない。なにかを考えたり、発言したりするとコンマゼロ秒のタイムラグもなく相手に伝わるのだ。相手の脳と直接つながっている感覚がある。
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