29(承前)

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 通信に時間がないということは、同時に距離もないということだった。クロガネワイヤーは離れていても、瞬時に変化して情報を伝達する。同じ部屋のなかだろうと、遠い異国だろうと、まだ試されていないが太陽系の惑星間ほどの距離ならば、無時間通信が可能だろうと進駐軍技術部により評価されていた。もしかしたら100光年あるいは数万光年でも、無時間通信が達成できるかもしれなかった。日乃元に伝わる三種の神器は、宇宙から墜ちてきた異世界のOパーツなのだ。彼らの超科学技術はまたほんの一端しか解明されていない。 「逆島少尉、体調はどうだ?」  兄の継雄が他のコックピットには流れない秘匿回線でたずねてきた。新しい抗時間加速薬の副作用を案じているのかもしれない。過去への転生と未来の記憶という激烈なフラッシュバックとフラッシュフォワードは、今回は起きていない。
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