あらすじ

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目が覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。ジャージ姿の悟が寝ていたのはコンクリートに直接敷いた布団の上。 悟は慣れた手つきで薄いブルーのボトルに汲んでおいた水で身支度をする。髭を綺麗に剃りスーツに身を包むと、こんなところで生活しているようには見えない精悍な顔の青年が鏡に映る。 悟はここから徒歩5分の、大きな会社に出勤していった。悟は人気者で、出社するとみな陽気に彼に声をかける。 普通の社会人に見える悟が屋外階段で暮らす理由は、重度の閉所恐怖症のせいだ。例え広くとも壁にかこまれたところにいると胸が苦しくなる。解放感のある場所でないと、眠るどころか長時間いることができないのだった。 悟は誰にも迷惑をかけないよう、自分の土地を買うのを目標にしていた。そのために今は外回り営業をこなし、お金を貯めている。ほとんど外にいられるこの営業職は口の上手い悟にとって天職とも言えた。 そんな悟の悩みは恋人の真奈美との関係だ。悟が家に呼ばないので、浮気を疑われていた。 悟は自らの恐怖症を隠し、持ち前の口の上手さで真奈美を巧みにごまかし交際を続けていたが、ついにごまかしきれなくなる。 悟は意を決して、友人にも告白したことのない自分の奇怪な恐怖症を真奈美に打ち明ける。 みなから羨まれる理想の結婚生活を思い描いていた真奈美は激しく動揺し、悟と距離を置く。 インスタ上では変わらぬ充実した生活を送る真奈美だったが、いくらイイネをされても胸に空いた穴が塞がらない。 真奈美は悟の恐怖症も含め全てを愛する覚悟をし、結婚。 後日、庭付き一戸建てで暮らす二人。真奈美は家で、悟は庭で。奇妙な夫婦生活に近隣住民は白い目で見ていたが、真実の愛を手にした二人は幸せそうだった。
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