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愛の距離
彰が撮影の仕事でしばらくイタリアに旅立ってしまい。僕は暇をもて余していた。
来月、僕の小説が一冊発売される。手塩にかけた作品だ。
僕はやっと彰の愛を知り、受け入れることで小説家としての新たな道筋が見えた。それが形にできたんだ。
だが正直、売れ行きに自信はない。自信作が売れるとは限らないからだ。しかし今僕の胸は解放感でいっぱいだった。これでなんとかしばらくは小説家を名乗れる。
そんな僕の元へ昨日、結婚式の招待状が届いた。高校時代の友人が結婚するらしいのだ。 僕の知っているその友人からのものだとは到底思えないほど招待状は上品な封筒に入っていた。人は変わるものだと実感する。……一人で変わることは難しいけれど。
僕は招待状を引き出しの中にしまった。
結婚式というのは昔から苦手だ。
というか家から出ること事態が僕は苦手なのだ。彰が片付けてくれた家の中も大分散らかってしまい今はとても居心地がいい。
しかし結婚式の日にはまだ彰は日本に戻っていないから僕はやっぱり出席せざるを得ないだろう。
寂しがり屋の友人のために。
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