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(番外編)他人の目1
僕は目を疑った。
とても信じられず、立ち尽くしていた。
僕の名前は木村眞也、27歳。出版社に勤務している。今日は僕が担当する小説家の家へと打ち合わせのため訪れていた。
その小説家とは天野征。
若い女性を中心に人気のある作家だ。
事件は天野の携帯電話が鳴り、天野が部屋を出て行ってしまった後に起きた。
僕は何気なく座っていたソファから立ち上がり、窓辺へと歩いた時だった。
少しだけ開いた窓から初夏の風が吹いたのだ。するとノートパソコンや資料用の書類などが乱雑に乗った机からヒラリと一枚、何かが落ちた。
それを拾い上げてみると、それは先程まで僕の目の前にいた小説家のあられもない姿だった。
「せ……先生?」
天野征という小説家は身長175センチくらいの痩せた体型で、色白で顔は整ってはいるが少々尖り過ぎる鼻は横顔に神経質さを漂わせ、人を余り寄せ付けない雰囲気だ。しかし笑った時のその顔は神経質さなどどこにもない、目尻が下がって人懐っこい子供のような顔になるのだ。
初対面でたじろいでも何度も会えば先生のことを皆たちまち好きになってしまうだろう。
それが……。
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