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-浪士組屯所内 広間-
「だからって、どうして連れて来ちゃうんですか?どこの馬の骨とも、わからないのに。」
行き倒れていた、とは言え。身元不明な男女二人を屯所内に入れた(運んできた)永倉と斎藤に『異』を唱えたのは、やや中性的な容姿をしている─名を『沖田 総司』と言う─青年だった。
「いや、総司。永倉君達の判断は正しい。京の治安維持を目的とした我等としても、行き倒れになっている者を、放ってはおけんだろう。」
そう言ったのは、この浪士組の局長でもある『近藤 勇』。剣の腕は立つものの、懐が深く・情に厚い。人が好すぎるのがたまに傷だが、そんなところが『人望を集める要因』なのも事実だった。
「すまねえ、近藤さん。見つけちまったもんは、見なかったことには出来ねえし。しかも、片方は女の子だったしな。」
元々、短髪の男─『永倉 新八』─は酒と女を愛する江戸っ子である。持ち前の正義感もあり、どうしても捨て置くことが出来なかったのだ。
「だったら女の子だけ助けて、男の方は放っておけばよかったのに。」
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