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などと、沖田は尚も納得いかないように、とんでもないことを言い出した。人道的に問題ありだ。
「……俺は別に、助ける気はなかった……」
『ポツリッ』と呟くように言ったのは黒髪の男─『斎藤 一』─である。しかし、既に運んでしまった手前、強くは反論出来なかった。
-妙な沈黙に満ちた広間に二人の人物が入ってきた。今まで、あの男女の様子を見ていた『山南 敬助』と『井上 源三郎』だ。
「二人とも、気が付きましたよ。命に別状はないようです。………ただ………」
そこまで言った山南は気遣わしげな表情をして眉を寄せ、言い淀んだ。すると、それを察したらしい井上が、やはり気遣わしげ表情で続きを話した。
「女子の方は言葉が話せない………と言うか、声が出せなくなってしまったようなんだよ。………よほど、酷い目にでも遭ったのかねぇ。」
「っ!………そう、か。あの子………喋れない、のか。」
『二人を助ける』と決めたのは自分であるため、二人のことを一番気に掛けていた永倉は、寂しそうにそう呟いた。
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