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-とある山奥の隠れ里-
『村』と称するには大きくて、『町』と称するには小さい………そんな里だった。
その里に住む人々は善良で働き者。里を治める長は女人であったが、心優しい賢君であった。
その日。里は大いに賑わっていた。里長が住む一番大きな屋敷の広間には、里人のほぼ全てが集まっていた。
長の一人娘の『婚礼の儀』が行われる為………だった。
-ドオオォォンッ-
突如として、轟音が響き渡った。人々が立ち上がった時。一人の忍び装束の若者が広間に飛び込んできた。
「って、敵襲っ!里は包囲され、門が破壊されました。長、如何致しましょうっ?!」
一気に広間が騒然となる。人々は『何?このような時に』・『何故、この里が』などと、ざわめいていた。
「………お母様………」
婿となる若者と顔を見合わせていた一人娘が、そう問い掛けると、長が立ち上がった。
「皆、静まりや!『敵襲』と言うが『敵』とは誰ぞ?」
凛とした声で、里長─御堂 嵐─が若者に問い掛ける。この里に住む者は、長を始めとして善良故に襲撃される覚えなどない。
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