― 惨劇の夜 ー

3/7
前へ
/44ページ
次へ
 襲撃される謂れなどない、ただの人間だ。あるとすれば、ただ一つ………長を始めとした里の者全員が『不思議な能力(ちから)』を持っていることだった。  だが。その能力は古来より、世の為・人の為に行使されてきたものだ。感謝されこそすれ、何故? 「わ、わかりません!で、ですが侵入した者達は『言霊遣(ことだまつか)いを殺せ』と叫んでおりました。」  若者はそう言った。見ればあちこちに傷を負っている。若者の言葉に里人の一人が驚愕に目を見開きながら、激昂したように若者に詰め寄る。 「馬鹿な!それは『皆殺しにしろ』と言うことだぞっ?警備の者達は何をしていた?!」 「っそ、それが全員………殺されましたっ!」  若者の涙ながらの訴えに、広間に集まった里人達は驚きを隠せない。だって、普通に考えれば、そんなことは『あり得ない』のだ。 「何だって?奴等は里の中でも、選りすぐりの精鋭なのだぞ。それが唯人(ただびと)に敵わなかったと言うのか?!」  言霊遣いの精鋭。そうならば、何の能力も持たぬ、ただの人間に敵わぬわけがない。 「襲撃者達を煽動しているのは、あの『御神薙(みかなぎ)様』ですっ!」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加