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ロウは暫くの間。『育ての親』である、その老白狐と暮らしていたけれど。ある日、死期が迫った老白狐に言われたのだ。
『司狼よ。我が死ねば、この社には、新たに鎮守の任に就く天狐が棲まうことになろう。
主は今のうちに、新たな住処を探すがよい。我が生きているうちにな。』
そうして、各地を放浪した。漸く、見つけた、森の住処。木々に囲まれ、人里離れた山奥。
傍には綺麗な川もあり、川と森の恵みだけで、わざわざ人里に降りることをせずとも、不自由なく生きることは出来ていた。
-何も、人間と関わろうとは、思ってなどい
なかったのに-
関わってきたのは、寧ろ人の方だったと言える。それは、前触れなく、突然訪れた。
ある日、森の中で泣き声が聞こえた。声音からして、恐らく年端もゆかぬ童のもの。
司狼丸は木の影に身を隠しながら、様子を窺う。人里離れた山奥に、何故、年端のゆかぬ童がいるのか?
近くには人の気配を感じない。と言うことは、童は一人きりだと言うことだ。普通に考えるなら、あり得ないこと。
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