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怪我を負い、泣く童を放っておけなかったとは言え、人間とは極力関わりたくない。
育ての親の老白狐は、社にて鎮守を任じられた天狐であったが、ロウは『狐』ではない。
嘗ては、天津神であったとは言え、それは何代も前の祖先のこと。先祖が妖に堕ちたが故、ロウ自身は産まれた時から妖だったのだ。
如何に天津神の血脈を継いでいようと、天狐のように社も持たぬし、誰かに奉られているわけでもない。今のロウは、ただの妖に過ぎぬのだ。
そう………恐らく。本来の獣の姿は、人間に忌み嫌われ、恐れられる。
農耕神の眷属であった稲荷神………あの老白狐とも違う。人間に寄り添い、暮らす獣ではないのだ。かと言って、山野に暮らす野生の獣でもない。
-『異端』なのだ、紛れもなく-
しかし。本来なら不可抗力であった『人間との関わり』は、それで終わっていたはずだった。………あの童が、ロウの住む森をまた訪れるまでは………。
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