- 司狼丸の過去 -

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 確かに、童はロウのことを誰にも話してはいないらしいが、何故また来ているのか。  ロウの住む森は、山菜や茸と言った自然の恵み………所謂『山の幸』が豊富であった。だから、山菜摘みや茸狩りに来るのはわかる。  だが。ロウの住処である庵は、その森のかなり奥まった場所。意図せずして、人間(ヒト)が訪れることはない。  と言うことは、童はわざわざ〝ロウに会いに来た〟と言うことだ。まぁ、山菜摘みや茸狩りのついでなのかも知れないが………。 「何をしている?道に迷ったわけでもなかろう。また一人か、親はどうした?」  ロウは、そう童に問うたが、別段興味があったわけじゃない。前回もそうだったが、まだ幼子だ。  親は目の届くところに置き、常に気にしてやらねばならぬだろうに。 「………いない。二人とも、あたちが産まれて、すぐちんじゃった。」  物心さえつかぬうちに、この童一人を遺して逝ったと言うのか。さぞかし無念であったのだろう。  我が子の行く末が気にかかり、成仏出来ずにいる。人間(ヒト)ではないロウには、この童の背後にいる、両親の霊が、見えるようになっていたのだから。  だが。見えたから、どうと言うことはない。所詮はだ。
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