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見えているからと言って、ロウがこの童のために、何かをしてやる必要はないのだ。
「…………二親以外の身寄りは?」
特に興味があったわけではない。しかし、この童は二親は『産まれてすぐ死んだ』と言った。
それならば、二親の顔はおろか、温もりも抱かれた記憶さえもないのだろう。ふと、己の境遇と重なったからだ。
ロウも天涯孤独である。同族がいるかどうかも、わからない。赤子だったが故、白狐に拾われると言う僥倖がなければ、恐らく生きてはいなかった。
それは、この童とて同じだ。面倒を見てくれる者がいなければ、生きてはいなかったはずだ。ならば、その面倒を見てくれる者は、何故この童を放っておくのか?
ー何故、傍に着いていてやらぬのか?ー
そもそも。こんな幼子を山に入らせ………あまつさえ、山菜摘みと茸狩りをさせるとは何事か?
ロウは、その生い立ちと言うか、境遇ゆえか。種族関係なく、雛には恩情を掛ける。関わり合いになりたくなかったのに、この童を放って置けなかったのも、それが理由だろう。
「姉ちゃがいゆ。れも、姉ちゃ……病だから。だから、わたちが………」
言ってるうちに、涙が『じわぁ』と滲んでいる。ロウは『ふぅ』と小さく溜め息を吐いた。山菜が積まれた笊と、茸が入った籠を片手に。もう一方の片手に童を抱き上げた。
「日々の糧を得るためならば、来るなともいえぬか。仕方あるまい。」
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